みなさんはじめまして。
陰glish BLOGです。
どんな人間なのかは
以下のスペックをご覧ください。
[スペック]
・アラサー
・無職
・英検1級/TOEIC990
・元学校教員/元塾講師
・海外経験一切ゼロ。パスポート持ったこともない。
・友達はもちろん少ない。
要するに、英語ができる日陰者です。よろしければ、Twitterもフォローお願いします。
さて、復帰早々に教材レビューブログと化している本ブログでございますが、今回は山崎竜成先生による『知られざる英語の「素顔」-入試問題が教えてくれた言語事実 47』に関して、ちょっといったん大脱線から始まる感じのレビューをしていこうと思います。
そっちのほうがどんな本なのか伝わりやすいかな~と思いまして。お許しくださいませ。あと、最初のほうは「褒める気あんの?」って文章が続きますが、総合評価は「快作」です。ご安心ください(?)
Contents
[大前提]陰glish BLOGさんの客観的読解力スペック
「どのレベルの人間が読んでのレビューなのか」がメチャクチャ大切と思いますので、それを書きますこと、お許しを。イキり散らかすことが目的なわけではないです。サクッと読み飛ばしちゃっても大丈夫です。
①英検1級の読解問題であれば、8割はまず切らない。調子よければ10割。
②国際基督教大学卒かつ元学校教員。サマザマ分野の原著をソコソコ何冊かは読破している。
③ただし、「教育・言語教育専攻」であり、「英語や言語学そのもの」を大学レベルで深く学んだわけではない。
④『ネクステ/ビンテージ/スクランブル系統』で扱うくらいの文法事項であれば、よっぽどなド忘れ以外、すべて解説できる。
⑤『ポレポレ』『透視図』『英文解釈教室』あたりも完走済み。これらの英文も、ちょっと準備時間があれば、ほとんど全て解説できる。
⑥"TIME"や、ムズカシい英文学のように、ネイティブの知識層が読むレベルの英文が波のように押し寄せる媒体になると、辞書を片手に読めないことはないが、「ちょっとしんどい」という感想が先に来る。
総じて「特殊なバックグラウンドがない日本の受験生が、英語を武器にしようとメチャクチャに努力して、現実的に到達できる最高地点」くらいのレベルかなあ、という自己認識です。「そうなんですね。」と思っていただけると幸いです。
んで、『知られざる英語の「素顔」』ってどんな本?
やっと本題に入ります。
こちら、私が偉そうに様々を書くより、まずは、本文の言葉をそのまま使わさせて頂くのが最も誠実と思うので、お借りいたしましょう。
本書は大学入試問題に出題された英文を題材に、学校や塾・予備校でほとんど教えられることがなく、従来の学習参考書でも取り上げられることのない、英語の文法現象を読者の皆さんと共有することを目的としています。
『知られざる英語の「素顔」-入試問題が教えてくれた言語事実 47』はじめに P3より引用
英語が好きで、「英語について少しでも詳しくなりたい」とお考えの方であれば、英語の先生も、大学生も、社会人の方も、誰でもお楽しみいただけると思います。
また、学校等で一通り英文法を学んでいれば読めるように配慮していますので、もっとレベルの高い英文法を知りたい、細かいことを知りたい、英語の実態に少しでも近づきたい、既存の英文法の参考書では満足ができない、と感じている高校生や受験生のぜひ皆さんにも読んでいただければと思います。
上の通りです!以上!で済む話なのですが、もう少し勝手に「どんな本なのか」を以下に紹介させていただきます。
・「進行形の解説用法」
・「透明関係節」
・「仕切り直しのthat」
上記のような事項、皆さま、ご存じでしょうか?私は知りませんでした。
『知られざる英語の「素顔」』 には、こんな感じの事項が
・37項目は、受験の英文や、コーパスから引っ張ってきた充実の用例や、しっっかりとした説明付きでたっぷりと
・あと10項目はサクサクと
合計47項目取り上げられております。
ちなみに、正直に言っちゃいますと、「用語としての知識」としては、「私」は、2割くらいしか知らなかったです。。。
ぶっちゃけると、別に、それなりに読めはした
で、誤解を恐れずに断言しますが、 『知られざる英語の「素顔」』 に載っている英文なのですが、私くらいの能力で
「そこにある文法を説明できるかと言われると『なんだこの形???』とはなるが
意味を取れと言われたら、まあ、百発百中とは言えないが、別に意味内容自体は取れるもののほうが多い。」
っていうのが、率直な感想です。
言い換えると、「英文に使われている文法事項を、言語化できるような知識としては知らないけれども
過去の経験の積み重ねによる経験測により、ソコソコ読めちゃいはする」って感じです。
以上、レビュー終了です!!!ありがとうございました!!!!!
。。。。ハイ、さすがに嘘です。これじゃ、巷のヘンテコクソブログと何にも変わりませんね。
誤解なきように、このタイミングで断言いたしますが、『知られざる英語の「素顔」-入試問題が教えてくれた言語事実 47』は、学習者、あと指導者にとって、間違いなく、有意義な物体であると考えます。
ちょっと、その有意義性を論じるために、いったん脱線するのですが、「二種類の知識」について説明することをお許しください。
知識その1:手続き的知識(Procedual Knowledge)
「手続き記憶」なんていう風にも言います。表記がブレるだけで、指すものは同じです。あと、以下、ある程度かみ砕いて説明するので、学問的正確さを100%尊重してはいないことをお許しください。
突然ですが、呼吸する際の筋肉や神経系のメカニズムに関して、皆さま、説明できますでしょうか?
できる方もごく少数いるとは思いますが、基本的にはできない方のほうが多いと思います。
それでは、もう一つの問いかけをお許しください。
皆さま、呼吸できます?
たぶん、実際呼吸できるかってのに関しては、このブログを今読んでいる99.999999999%くらいの方ができると思います。
ここで考えてみてほしいのですが、今、多くの方に「呼吸のメカニズムは、言語化できる形では知らないけども、問題なく呼吸はできる」という事象が起きていると思います。
このような、「言語化できる・できないに関わらず、経験則的に実行することができる知識」もっと嚙み砕いて言ってしまうのであれば「身体が覚えている状態の知識」を、「手続き的知識(Procedual Knowledge)」なんて言います。
知識その2:宣言的知識(Declarative Knowledge)
こちらも突然ですが、皆さま、「三単現のs」が付く条件って、説明できるでしょうか?
こちらに関しましては、このブログをお読みの皆さんであれば、ほぼほぼ説明できると思います。
「主語が単数、三人称で、時制が現在の時、動詞の後に付くs」ですよね。
三単現のsのように、宣言的知識ってのは、「言語化できる知識」のことを指します。
もうちょっと、『知られざる英語の「素顔」』から離れて、こういう下りが続くんだけど、お許しを。。。
言語習得過程を、2つほどモデル化してみよう
以下、「手続き的知識」と「宣言的知識」ってのは、用語として振り回すので、上2つの段落をよく読んで、ついてこれるようにしておいてもらえると、幸いでございます。
言語習得パターン1:「宣言的知識」を通らないで
「手続き的知識」オンリーで習得する
読者の皆さまへの問いかけ、三度目でございます。
皆さま、日本語が母語であると推定するのですが、「名詞」とか「形容詞」とか「連体形」とか、日本語が喋れるようになるまでに、意識したでしょうか?
していないですよね。していない前提で話を進めます。
じゃあどうやって日本語習得に成功したかと言いますと、周りの人間の発話を聞いて、真似しながら自分でもそれを発声して、文章も日々大量に読んで、そんな、大量のインプットを通じて、文法なんて意識することなく、ある意味では自然に習得したのだと思います。
母語で行われるような、こういう言語習得方法を、カッコよくまとめると
この段落の見出しのような『「宣言的知識」を通らないで「手続き的知識」オンリーで習得する』って言葉に集約されるのです。
言語習得パターン2:「宣言的知識」を身に着けたあと
それを「手続き的知識」に持っていく
こっちは(最近はそうでもない中学高校が増えているらしいですが)一般的な学校英語をイメージしてもらうと、わかりやすいのかなと思います。
それこそ、"三単現のs"を例としましょう。これをどう身に着けたかといいますと
①まず「三単現のsってこういうものだよ~」と「宣言的知識」として習う。
②「三単現のs」を意識しながら練習ドリルをやったり、三単現のsが使われた文章を読んだりを繰り返す。
③最終的に「三単現のs」が使いこなせるようになったら習得完了。
って経緯になると思います。
こういう、まず知識から入って、それを意識しながら、使いこなせるようになるまで練習するって流れを、やっぱりカッコよくまとめると、『「宣言的知識」を身に着けたあと、それを「手続き的知識」に持っていく』という日本語になるのです。
以上、SLAをガチってる読者様からすると、いろいろ端折ってる印象を受けると思うのですが、ご勘弁くださいませ汗
『知られざる英語の「素顔」』のイイところは、以下のようにまとまる
ここまでの前提知識を元に、『 知られざる英語の「素顔」 』のイイ所を、あえて極限まで端的にまとめてみます。
「今まで
実際の英語では
出てくるのに
『宣言的知識』として
扱われなかったような事項を
『宣言的知識』として
学ぶことができる」
以下、上のまとめをベースに、もうちょっと噛み砕きましょう。
文法を「宣言的知識」として学ぶと何がいいのか①:単純にそっちのが早いことが多い
これも、三単現のsを例に説明しましょう。
①三単現のsを使っていたり、使っていなかったりする英文をシャワーを浴びる様に読み聞きして、自然に気づく。
②「三単現のsのルールってこうだよ~」ってのを教わって、「なるほど~」ってなってから、英文に触れる。
「①こそ自然な言語習得!!!」ともてはやされがちですが、現実、ソコソコ理屈で物事が捉えられるようなお年頃になってからは、実際問題として、②のが習得が早いことの方が多いです。(※ちなみに文科省ってところが、多分ここのところを勘違いしてる)
そして、『 知られざる英語の「素顔」 』 は、今まで学校英語の体系で扱われなかった英文法に関して、非常に詳しい説明を通して、上記の構造とまったく同じ恩恵を、学習者に与えてくれます。
それこそ、私が国際基督教大学で、大量に英文を読まされるうちに、「①のように、身に着けたり身に着けなかったりした文法事項」を、最初から「教えてくれる」ってことです。
また、「宣言的知識」ベースでの学習で陥りがちな罠として「知識として知っているけど、実際の英文に触れたわけでないので『使える知識(=手続き的知識)』にならないまま終わる」ってのがあるのですが、そこも、 『知られざる英語の「素顔」』 には、大量の用例があるので、カバーされています!
(そして、出展が「入試問題」と「実際の英語」なので、「こんなん使うのかよ?」という感情を問答無用で論破してきます笑)
②:思考が可能になる→正確性が上がる
諸説アリですが、我々は言語を使って物事を考えます。
「三単現のs」という言葉と、その原理を知っていることにより
「なんか動詞にsが付いたり付かなかったりするアレ、ついてると気持ち悪いときもあるし、ついてないと気持ち悪い時もあるが、理屈はよくわからん」という状態から脱却し
確かな根拠をもって、動詞に三単現のsをつけることができるようになるでしょう。
「進行形の解説用法」だって「透明関係節」だって「仕切り直しのthat」 だって、それと同じです。
このような事項を、用語、つまり『宣言的知識』ベースで 『 知られざる英語の「素顔」 』 を使って身に付けることができれば
その後の英語人生で、経験測のみに頼ることなく、このような用語を道具として使いながら
そして、自らが操る英語の正誤を理論立てながら、英語と向き合うことができるようになります。
その結果として、当然ながら、一段階、正確性を上げた英語との付き合いができるようになるのではないでしょうか?
③指導者として「明確な指導」ができるようになる
こちら、はしがきにも同じような趣旨のことが書いてあるのですが
(私を含めた)英語指導者は「経験の中で『手続き的知識』としては知っているけれども『宣言的知識』としては知らないこと」に出くわすと
「理屈はわかんないんだけど、こんな感じだよ~笑」
「あ~、文法的には間違ってるんだけど、ネイティブそういう言い方もするよね~笑」
みたいな感じになりがちです(自戒を込めて)
こうならないで、イザというときには、バシッと
「あ、それ、行為解説用法ってのあるんだよ。今知っとく必要はないから軽く聞き流していいんだけど、コレコレコウコウで。。。」と言える指導者の方が、「カッコいい」ですよね。
『 知られざる英語の「素顔」 』 は、学校英文法の域を一歩超えて、そんな「カッコいい」 指導者になる、その足掛かりを与えてくれると思います。
やや脱線だけど④:一般的学習者の気持ちに戻れる
とりあえず私は「とてつもなく英語ができるわけではないが、でも、一般的学習者の皆さまよりは英語ができるし知ってもいる」くらいの能力を持っています。
そうすると「連鎖関係代名詞」とか「仮定法if省略倒置」とかいう用語を眺めても
「あー、はいはい、アレね」ってなっちゃいまして、こういうのの理解に苦しむ当事者目線を忘れがちになります。
はい、『知られざる英語の「素顔」』を読んで理解しようとすると、「忘れていたあの時の気持ち」を取り戻せます(笑)
『知られざる英語の「素顔」』 気を付けるべき所
両論併記がモットーです。短所ってわけではないのですが、これも記しておきましょう。
最大最高に気を付けてほしいから
これだけ強調したいコト:教材としてのレベルは高い
イキって迂闊に手を出すな
いきなり最近の入試問題事情に話がぶっ飛ぶのですが
・早稲田の教育学部ってところの英語の難易度が破滅的なレベルに
・早稲田の文化構想ってところの空所補充の英文が英検1級長文より明らかに難しい
・さらに同じく早稲田の国際教養学部で『自由論』という超大物が出題される
などなど、「世はまさに、英語大難化時代!!!!!」という様相を呈しております。
こういう情報に対して、耳と目をでっかくしている受験生は、こんなことを思いがちなんですよ。
周りと同じような、いままでの勉強じゃ足りない!!!
プラスアルファが必要!!!!!!
そして、「プラスアルファ」の教材として、『知られざる英語の「素顔」』に手を出す。
いや、そのチョイス自体は間違ってないと思います。
「周りの普通の受験生」から一歩差を付けられるレベルの教材です。
前提条件として、すでに「普通のことは、普通にできる学力」に達しているのであれば!!!!!
初手『鉄壁』で沈没したり、初手『ポレポレ』で沈没したり、最近では『英文解体新書』でその現象が起きているとも聞きます。。。。。
この本も、「イキリ受験生」を引き付ける魔力があると思います。そこのところだけ、学習者各位、気を付けてください。ってので、終わりにします。
『知られざる英語の「素顔」-入試問題が教えてくれた言語事実 47』
まとめ
①英検1級リーディングなら
まあ行けるマンが
「感覚的に
なんとなく
マアマアいけるけど
知識としては。。。」
ってレベルのことを
ガンガン知識として伝達してくれる!
②用例もたっぷり!
③知識・用例から享受できる恩恵は
教育学理論上
実際、タップリ!!
④イキって手を出すことだけ
マジで注意。。。。!